試合結果詳細

今日のお相手はアスリーツさん、非常に礼儀正しく、サインをしっかりと使っていて、ランナーは常に次の塁を狙う姿勢を見せている。
私達も是非見習わせて頂きたい手強いお相手だ。

（ベッズなんて、センターは守ってる時に風と戯れてるし、セカンドは普通のフライをシルク・ド・ソレイユ並のパフォーマンスを見せて捕球するし、うちのキャプテンは機動破壊を（勝手に）スローガンにして、結局誰も走らないし……
挙句の果てには一番機動破壊して欲しくないピッチャーが一番機動破壊してるし…もうどうかしてるよ……）

そんな私の心の声をよそに、センターはまだ風と戯れている。

「まぁいいか……」
そう呟いてミットを構えた瞬間、セカンドランナーがスタートを切った。

「……！！！」
予想していなかった三盗に内心焦ったのか、本日2度目の送球ミスを犯してしまった。


（どうしよう……栗山さんと目が合わせられない。）

バツが悪そうに微笑む栗山さん。
恥ずかしさと申し訳無さが入り混じり俯く私。


バッテリーは2人で一つって言うけれど、心を通わせるのは難しい。

出会った頃はお互いに笑顔だったけれど、最近どこかですれ違ってる気がする。
言葉では伝わらない本当の想い、変えられない過去、どこでお互いの心のボタンを掛け違えたんだろうか。
近くて遠い、18.44m。



この回はなんとか抑えたけれど、次の回の打球処理の際にまた送球ミスをしてしまった。
ガラスの様に脆い私の心は完全に折れていた。


正直、そこから先の事はあまり覚えていない。
気がついたら試合が終わっていて、8-1で勝利していた。

私は試合が終わってからも暫く動けなかった。
脱け殻のようになっていた私に、栗山さんは優しく声をかけてくれた。
「いつもありがとう。白石がいるから自信を持って投げられる。これからも宜しくな。」

（……！！）

そして私の返事も聞かずに颯爽と立ち去っていった。

落ち込んでいた私の心に一筋の光が差した。


「栗山さん……かっこいいなぁ……」
私の呟きは、春風に乗せられて夕焼け空へと消えていった。


白石