試合結果詳細

『戸村、遅刻の罪』

試合開始は朝9時。
グラウンドの空はまだ眠そうに霞んでいた。だが俺たちはもう汗をかいていた。
―8人で。

「戸村、まだ来ないのか？」
誰かが呆れた声で言う。スマホを覗くと、短いメッセージが。

「今起きた。」

こいつは野球が9人でやるスポーツだということを知らないのだろうか。
あまりの潔さに、逆に怒る気も失せた。
結局、俺たちは8人で試合を始めた。相手は強豪チーム。序盤は押され気味だったが、それでもなんとか3対1。思ったより善戦していた。
しかし中盤、藤原が走塁の際に足を痛め、無念の離脱。
ベンチに不穏な空気が漂ったその時―。

グラウンドの外から、あの能天気な声が響いた。
「おーっす！遅れてすまん！」
現れた戸村は、まるでピクニックにでも来たかのような笑顔だった。
「ここからプレーで取り返すから！」
と言ってグローブをはめる彼の顔に、反省の色は一切ない。

だが現実は甘くなかった。
打てば凡退。守ればエラー。おまけにミスの後も笑ってごまかす始末。
「何しに来たんだ、ほんとに…」
チーム全員が心の中で同じ言葉をつぶやいた。

それでも、野球というやつは分からない。
後半、打線が奇跡のようにつながり、ついに逆転。
ベンチの士気は最高潮。
「あと1回守りきれば勝ちだ！」

最終回、ツーアウト満塁。
汗で手のひらが湿る。息を飲むスタンドの空気。
そして―打球が飛んだ。

ショート正面。
誰もが勝利を確信した。
だがその打球の先にいたのは、他でもない、戸村だった。

カンッという乾いた音のあと、ボールは彼のグラブに吸い込まれ…るはずだった。
次の瞬間、「ぽろっ」と音を立てて地面にボールが転がる。

慌てた戸村はサードへ送球―だが、判定はセーフ。

ランナーが生還。
スコアは並び、歓声とため息が入り混じる。
その後、なんとか次の打者を打ち取って試合は終了したが、結果は引き分け。
誰も戸村を見ようとしない。

グラウンドを出る時、ふと空を見上げた。
さっきまで晴れていた空から、ぽつりと雨が落ちてきた。
まるで誰かのため息みたいに。
ー終ー

※この物語はノンフィクションです。
著者　Chat GPT