試合結果詳細

MVP:長尾（長尾マネが見守る中、均衡を破る先制タイムリー）
　　 見上（７回完封）

相手は好守ともに安定している好チーム。
そんな相手にモトコーは喰らいつく。
スコアボードには『０』が並び、球場には今までにないような緊迫した空気が流れ始める。
お互いにチャンスを作るも、両先発が踏ん張り、熱い戦いは最終回を迎える。
7回表、モトコーは満塁のチャンスを作り、打席には奥さんを初めてモトコーに連れてきた長尾が立つ。

そう、ここはモトコーが数々の苦汁を飲まされ続けてきた、錦糸公園野球場。
バッターボックスには今までにない真剣な顔つきで投手と相対する長尾、ベンチではただひたすらに般若心経を唱える奥さん、呼吸をすることすら忘れ失神・失禁し始めるナイン達、寝ている中村翔。
そんな中、長尾は104km/hの真ん中やや高めのストレートをジャストミート。
皆の思いを乗せた打球はまさに虹のように美しく、獅子の如く逞しく、それでいてどこか天使のようなやさしさに包まれながら、右中間を真っ二つに突き破る。
余裕の走者一掃タイムリーであったにもかかわらず、なぜか1塁に到達したところで走ることをやめた長尾からは、王者の風格すら漂っていた。
そのとき、生田のスカウターは53万を記録していたという。

その裏、エース見上が最後のマウンドに上がる。
一球ごとにあがる雄叫びに、緊張感は高まっていく。
1アウト！2アウト！
いつものように声を出していた横川の唇が震えているのをカメラは逃していなかった。

最後の打者を打ち取った瞬間、マウンドには歓喜の輪が出来上がった。
皆の笑顔が弾けていた。
笑顔なのに眼には光るものが・・・、そんなメンバーも少なくなかった。
スタンドからはありがとうの声が鳴り止まない。
その時、古川は思っていた。
このチームを作ってよかった。
こいつらとずっと野球をしたい、死ぬまでこいつらと一緒に青春がしたい。
ここには、モトコーには俺の人生がある・・・。
スタジアムが感動、愛情、友情、様々な感情に包まれるなか、中村翔は最後まで寝ていた。