試合結果詳細

松田は試合前練習から「オコエ打法！」とトレンドの言葉を連発し、ナインを和ませていた。
２０１６年プレーボール。
１回、いきなり先頭打者の飛球が、ライト松田のところに飛ぶ。
打球に追いついた瞬間にズッコけ、転んだ体に打球が落ちてきて止めるミラクル。単打を二塁打にして、当然大盛り上がり。シーズン初戦の緊張感を松田が1人で背負い、選手の硬さがほぐれた。先発三浦がピンチを乗りきると、押せ押せの２回に先制した。河上のレフトを襲うチーム初安打から、初参戦・松尾のタイムリー二塁打と押し出し四球で２点を挙げた。
エース三浦は安定感抜群の投球に新球カーブも加え、連打を許さない。女房役の小竹は、ワンバウンドを必ず体で止める安心感。すべりだしは順調だったが、守備のほころびが出た３回に同点とされ、５回に勝ち越しを許す。
中盤は１点リードされたまま、互角の展開。
活路を開いたのは、頼もしいキャプテン南雲のバットだ。８回表、右中間へ豪快にはじき返し、安打で出塁した三浦が同点ホームを踏んだ。高校を卒業したばかりの相手速球派投手が、露骨に悔しがる。
「今のボール、悪くなかったですよね？」
外角のコースぎりぎりに制球したボールを、教科書通りにおっつけた見事なバッティングだった。
終盤、試合が動いた。８回裏、２イニング目のサウスポー吉武が押し出し四球を与え、無念の降板。エース三浦が再登板するも、相手に傾いた流れを止められず、この回、痛恨の３点を失った。
ここで再び「オコエ松田」の登場だ。
９回表、２死一塁で打席へ。打った打球が体に当たり（普通はファウル）、フェアゾーンに転がったため慌てて一塁へ走る。
陸上部で１００メートル１０秒台と本家オコエ顔負けの快足も間に合わず。送球アウトを宣告された後、なにか吠えている。
「ファウルだった」
後出しじゃんけんで猛アピールだ。これには相手も爆笑して許してしまい、試合再開。「なんとか塁に出る」という必死の粘りが実を結んで四球を選び、藤木も見極めて２死満塁。
柴田がポテンヒットを放ち、１点をかえす。浅い当たりだったが、興奮した二塁ランナー松田はもう止まらない。
本塁クロスプレーで、タッチアウト。
ゲームセット。
オコエではじまり、オコエで終わった。
試合には敗れたが、高校球児のように泥だらけの顔が「お笑いでは完全勝利」を物語っていた。