MAX147km/h右腕が野球を通じて得た経験とは【後編】
2020/6/12
<前沢力さんの経歴>
千葉県立佐原高校硬式野球部に所属。高校1年生で投手としてベンチ入り、2年生時は主に1番打者を務める。外野と遊撃手を務めていたが、3年生ではエースとして活躍。卒業後国立横浜大学に進学し、硬式野球部に所属。2年春まで投手、それ以降は野手として活躍し、4年生の時に主将としてチーム1部昇格に貢献した。今ではIT企業に勤めながら、ピッチングを追求、オンラインサロンなどで様々な練習法を発信している。
投手にとって相手の打者をねじ伏せるストレートは武器であり、スピードは憧れだ。プロ野球では5年前に比べ平均球速が2~3km/h上がっているとデータが出ている。150km/hを投げる投手は珍しくなく、大谷翔平選手や、令和の怪物佐々木朗希選手は160km/hの速球で相手打者をねじ伏せている。草野球界でも150km/hを投げることを志し、今もなお選手として練習を続けているのが前沢力さんだ。前編に引き続き、今回は前沢さんの社会人以降の野球人生に触れていこうと思う。
大学卒業後、野球の夢をあきらめて就職した前沢さんは一般的な草野球人と変わらない野球を大学OBメンバーと楽しんでいた。ただ、心のどこかで真剣な野球から離れ自分が自分でなくなることを感じていた。野球は前沢さんの中でいきがいになっていたのだ。
あるときにSWBCジャパンの募集を知った。トライアウト合格者に知り合いもいたことから、もう一度本気で野球に取り組もうと、前沢さんの野球人生はもう一度スタートを切ったのだ。土日に実施していたジムでのトレーニングも増やし、臨んだトライアウトに見事合格。その後の試合でクーニンさんと出会い、入団。新たな野球人生をスタートさせた。
「野球に関わる人に対していい影響を与えられていることが最大のモチベーション」
クーニンズでプレーしているうちに、周囲の反応や応援を肌で感じる機会が多くなった。トレーニングについても関係者や視聴者からフィードバックやアドバイスをもらうことが多くなり、それに応えることで「うまくなりました」「球速があがりました」等、報告がもらえることにやりがいを感じていたという。
技術だけでなく、食事管理の徹底、行動のルーティンまで、プロ野球選手さながらの生活を送っている。これを仕事との両立をしながら実践しているというのが本当に驚きだ。
前編でもお伝えした通り、突き詰めるタイプの前沢さん。「トレーニングやプレーについても根拠を持つことを意識している」という。説明できることでプレーの再現性が高くなる。また、最近では指導することも多くなっており、共通して全員が抑えるべき知識や練習、人それぞれに合った練習との見極めを大切に、伝わる説明を心掛けている。
こだわり、考え抜いて野球に取り組む前沢さんはクーニンズでも試合を通じて一つの壁を越えられた試合があったという。それが東京バンバータとの一戦だ。2017年に負けていた相手、大学の時と同様に必ず次は勝つと誓って練習を続けていた。チャンスは翌年2018年に訪れた。相手投手は東京バンバータで元東京ヤクルトスワローズ赤川投手。
自分を信じてマウンドに上がった前沢さんは完封勝利という最高の結果を出して見せた。大学時代以上に考えて練習することや研究を積み重ね、よりレベルアップした結果、勝利につながったことは最高だったと振り返ってくれた。
野球への情熱、プレーについて前向きに語ってくれる前沢さんには目指す二人の選手がいるという。それがダルビッシュ有選手と大谷翔平選手だ。目指す姿でもダルビッシュ選手はアスリートとして、大谷翔平選手はプレーヤーとして二人を目標にしているという。
「ダルビッシュ選手については、俯瞰して野球界を見て、常に自分の言葉で発信しているところが尊敬できる。大谷選手は二刀流として、特にパッティングが理想」と人としての目標とプレーヤーとしての目標をしっかり持っているのだ。ダルビッシュ選手とは縁あって一緒に自主トレも行っている。この時の経験もリスペクトする理由になっているかもしれない。
常に真剣に野球を追及している前沢さん。次の目指すところは?と伺うと、「野球を絡めたビジネスを作りたい、野球の要素が入ることで自分の価値を出せると思っている。野球界に今後も貢献したい。」と笑顔で語ってくれた。
もうすぐプロ野球が開幕、草野球ができる環境も次第に整ってくるだろう。野球を愛し、人生をかけて取り組む前沢さんが150km/hを計測する日もそう遠くはないかもしれない。今後も注目の草野球代表投手として追いかけていきたい。
(teams編集部)