東邦高校の4番が語る高校時代とその後の野球の楽しみ方
2020/6/26
<野々川裕也さん経歴>
愛知県生まれで小学1年生から野球を始める。中日ドラゴンズ堂上直倫と同じ名古屋北リトルで野球を始める。名古屋北リトル、シニアで野球を続け、高校は愛知の名門東邦高校へ進学する。2年生のころから中軸を任され、3年生の時には4番を務めた。第90回全国高等学校野球選手権記念大会に出場し、バックスクリーンにホームランを放つなど大活躍。その後は立命館大学へ進学し大学野球を終えた後、菊水化学工業で軟式野球を継続。現在は草野球チームブロンズでプレーを続けている。
甲子園でホームランを打つ。野球を始めて甲子園を目指す人なら誰もが想像することだろう。愛知県で野球をはじめ、その夢をかなえた選手がいる。今回の主人公野々川裕也さん(30)だ。先日取材させていただいた水谷さんからの紹介で、「愛知県の強打者」とその打撃に初めて試合した時に驚いたことから是非紹介したいと言っていただき今回の取材に至った。
「僕なんかで記事になりますか?」
取材で最初の一言目がこの言葉だった。謙虚な方だなというのが第一印象。とはいえ経歴を見れば素晴らしい実績をお持ちの方だった。
愛知県に生まれ、野球を始めた野々川さん。小中は中日ドラゴンズ堂上直倫選手と同じ名古屋北リトル、シニア。当時から堂上選手と一緒に野球をし、常にあこがれの存在として目指すべき選手が目の前にいた。高校進学はもちろん愛知工業大学名電高校、通称名電だった。しかし、野々川さんは中学時代シニアで9番打者、身長も低かったため足の速さと低身長が理由で希望の名電に進学することはできなかった。
そんな中、進学先に上がったのは東邦高校だった。野々川さん曰く同じシニアに所属していた選手と一緒に練習会に参加し、当時1学年60人の選手を集めていたため、運よく入れたらしい。そこで出会ったのが、東邦高校の名将森田監督だった。
「森田監督との出会いで全てが変わった」
中学から東邦高校に進学した矢先、野々川さんはケガで野球から離れることになる。「分裂膝蓋骨」という成長期の男性によくみられる病気だった。入学早々膝のケガに悩み、スタートに出遅れた野々川さん。練習にまともに参加できない中、森田監督がよくご飯に連れて行ってくれたという。森田監督の自宅と野々川さんの自宅が近かったこともあり、ほぼ毎晩のようにご飯を食べさせてもらっていたという。コミュニケーションを取るうちにケガも癒え、練習に復帰。名前を覚えてもらっていた野々川さんはたまたま打撃練習に参加してみろと監督に言われた。そこで見せたバッティングに森田監督がほれ込み、新チームになってからメンバーとして出場する機会を得ていく。
「東邦のノックは信じられないくらいきつい」
東邦の練習時間はとにかく長い。金曜日の学校が終わると通常練習を20時まで実施。その後レギュラーメンバーだけ学校に残り、合宿を毎週行う。20時~23時まで12.3人のメンバーでノックを受けるのだ。そして23時~24時までバッティング。強打のイメージが強い東邦高校だが、一番時間を割くのはノックだとか。その後も朝6時から練習、試合、練習を繰り返し、深夜になるまでひたすら練習を行うという。練習で培われたことは技術よりメンタルと野々川さんは言う。「守備は取って投げるだけ、打撃は来た球を打つだけ」難しいことをシンプルに考えている野々川さん、その分メンタルが鍛えられたからこそ、平常心でプレーできたのかもしれない。
「甲子園のホームランは運が良かっただけ」
謙虚な野々川さんはこのように甲子園でのホームランを表現する。4番として甲子園に出場した野々川さん。小柄な野々川さんが4番を打つことになったのは、監督から一番体重が増えた選手だからと言われたそうだ。謙虚なのか、冗談なのか野々川さんのいい人柄が表れているが、バックスクリーンにホームランを放つパンチ力があったからこそ任されていたのだろう。
人生で一番衝撃を受けた試合は?という質問を投げかけてみた。すぐに出てきたのは大阪桐蔭との練習試合。夏の甲子園を優勝した当時のメンバーとの試合だ。サードを守っていた野々川さん。打者は楽天イーグルスで日本代表にも選出されている浅村選手。サードへの強烈な打球はグラブを出しても追いつかず、頭をかすめて、帽子を飛ばされたという。その強烈な打球にこれがプロに行く選手の打球かと衝撃を受けたそうだ。
現在も草野球を通じて野球を楽しむ野々川さん。とにかく楽しむことがモットーだという。高校時代厳しい練習に耐え抜き、野球を楽しくすることを忘れていた。その分今は仲間との野球を楽しんでいる。打席ではタフィーローズの真似をして、とんでもない打球を飛ばすのだとか。対戦相手もチームも楽しんでくれることに加え、ふざけている中でも結果を残すことで、相手にも嫌がられないプレーを心がけているとのこと。今年はボーアで出場するそうだ。今も変わらず野球が大好きな野々川さん、愛知の打撃王として今年もフルスイングする。
(teams編集部)