PL学園・明治大学と名門を渡り歩いた硬式野球エリートの軟式野球への挑戦。(前編)

2020/7/10

<岡本昂大さん経歴>
兵庫県の淡路島で育ち、野球を始める。小学生は地元のチームでプレーし、中学進学と共にPL学園中学校に受験し合格。勉強と共に野球も続けた。高校も名門PL高校野球部に在籍。現ミネソタ・ツインズでプレーする前田健太投手と共に3年春の甲子園大会に出場。不動の1番センターとして活躍。大学は明治大学に進学し野球部に所属。現在は大阪バンバータの選手兼監督。

「野球エリート」今回取材させていただいた岡本昂大さん(32)はこの表現が非常によく似合う。常に名門の中で野球を続け、軟式野球界でも名をはせるバンバータでプレーをした岡本さんに野球への思いを聞かせていただいた。最前線でプレーし続けた32年間。前・後編に渡る2部作として、前編はまず岡本さんの大学までの野球人生をについて振り返っていく。

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PL学園への憧れ
兵庫県淡路市で育ち、父と兄の影響で野球を始める。少年野球をはじめ、少し経つとPL学園の存在を甲子園のテレビ中継がきっかけで知った。これが岡本さんの野球人生の一つの大きな転機となった。「PLで野球がしたい」この思いが岡本さんの中で強くなり、中学からPLに進学することを決意した。PL学園中学校の野球部は高校ほどレベルが高いものではなかったと岡本さんは言う。そのため内部進学をする生徒の中でPL学園野球部に入部する人は少なく、入部しても途中で辞める人も多かったとか。そのような状況でも岡本さんは内部進学生として野球部の門を叩いた。

負けず嫌いの源泉は親への思い
PL学園野球部は全国から集まる推薦組がほとんど。まさに野球界の金の卵が当時集結していた。野球の実力はもちろん、各チームの4番やエースが集い、性格的にも気の強い人間が多かったそうだ。内部進学で実力差を痛感していた岡本さんは1年生の時にスタンドから試合を観戦し、レベルの違いを感じていた。それでも岡本さんは「不思議とレベル差を感じながらも負ける気はしなかった」という。本人曰く、負けず嫌いな性格。とにかく妥協や途中で辞めることはしなかった。負けず嫌いの性格の源泉は何なのか、岡本さんに問いかけたところ、親への感謝を口にした。「自分の夢を支えてくれる、応援してくれる親に甲子園でプレーしている姿を見せたかった」常に自分の好きなように野球をさせてくれた親にPLのユニフォームを着て甲子園に立っている姿を見せたい。この自分のためではなく、人のために頑張る思いが、自分の支えとなり強い気持ちで3年間過ごせたのだろう。その結果、最終的にはPL学園の1番センターのレギュラーを獲得。「マエケン」こと前田健太選手と共に春の甲子園に出場し、夢をかなえた。内部進学生として歴史に名を残す結果を出したのだった。

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明治大学の秘密兵器として過ごした大学野球
PL学園で1番センターとして甲子園に出場。これ以上ない肩書を手にした岡本さんはプロ野球選手になることも目標にしながら、大学野球の名門明治大学に進む。周囲からも期待され、チーム内では一目置かれる存在。入学早々にはこんな伝説を作っている。
明治大学のグラウンドは2006年に今の府中グラウンドが完成。両翼100m、センター122mの立派な新球場が完成したのは岡本さんが入学する直前のことだった。入学したばかりの岡本さんはさっそく新球場でのバッティング練習に参加。岡本さんが放った打球は軽々とフェンスを越え、レフト後方の丘に立つ明治大学元監督島岡吉郎氏の銅像に直撃。推定飛距離160mの超特大HRによって完成したばかりの銅像のおでこがへこんだという。周囲への衝撃と共に明治大学に伝わる伝説を作った岡本さんは「明治大学の秘密兵器」と周囲から呼ばれるようになった。しかし、大学野球では一度もリーグ戦への出場はなく、岡本さんは「明治の秘密兵器が、秘密のまま4年間終わってしまった」と笑いながら話してくれた。

「岡本をプロにできなかったことが一番の後悔」
岡本さんは「卒業してから、色んな人から善浪監督がこんなこと言ってたぞって良く聞くんですが、嘘か本当か分かりませんけど、そう言ってもらえてるとしたらありがたいですよね。大学時代にはここでは言えないようなことが色々ありましたから(笑)」と笑って話すが、明治大学野球部でコーチ4年、監督12年を務め昨秋退任された善波達也氏は何人ものプロ選手を輩出した名将。岡本さんの素質の高さを物語っている。OB会でお会いするときは「隣へこい」と声をかけてくれるそうで、今でも感謝している。

様々な経験を経て、大学を卒業した岡本さん。大人になった今、野球へ恩返ししたい気持ちが大きくなっているという。そこには学生時代に燃え尽きることができなかった思いが強くある。高校野球の名門では甲子園を経験し順調な3年間を送り、大学野球では悔しい経験もした岡本さんは社会人になり、再び野球に情熱を注ぐことになる。後編では社会人以降の岡本さんの野球について注目していく。

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(teams編集部)

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