ムコウズの輪を世界中に、野球Youtuberが描く未来図(後編)
2020/9/18
<野球Youtuber向さん経歴>
福岡県生まれ、小学生の時に父と兄の影響で地元のソフトボール子供会に参加したことがきっかけでその後中高と野球への道に進み、小中校全てで主将を務めた経験を持つ。専門学校時代も野球部に所属し、九州大会に3番セカンドで出場。現在は野球Youtuberとして、自チームの「ムコウズ」を中心に全国に野球の魅力を発信している。
野球チームの在り方は、それぞれ。大人になってもチームで必死に勝利を目指すチームもあれば仲間内で楽しくプレーするチーム。それぞれに正解はなく、野球というスポーツを様々な価値観や思いで多くの方々が楽しんでいる。向さんが率いる「ムコウズ」も日本中の多くの草野球チームの一つである。後編ではYoutubeチャンネルの立ち上げとムコウズ結成秘話について話していこうと思う。
野球との再会、編集マンとの出会い、そしてYoutuberへの道へ
18歳で専門学校に入り、ホテルマンの道を目指した向さん。念願の帝国ホテル入社後も持ち前の明るい性格とトークで活躍していた。この人間性を評価され、帝国ホテルの営業部に異動、土日が休みになったこともあり久しぶりに野球をやってみようと思い始めた。草野球3番地という掲示板型の助っ人募集サイトで様々なチームの助っ人として参戦。誰とでも話ができ、人見知りしない性格が功を奏したのか、色々なチームで関係性を作っていった。草野球の助っ人生活を送っていた時、目黒マイナーズというチームに出会う。現在は解散しているが、Aクラスで都大会に出場するほどの実力があるチームで、向さんも助っ人からこのチームで主将を務めることになった。当時このチームを率いていたのが目黒マイナーズ監督であり、その後向さんをYoutuberへと導いてくれる方だった。帝国ホテルでホスピタリティを持ちながら5年間仕事をしている中で、向さんの気持ちは変化していった。「自分で面白いことがしたい」転職を考えていた時に、目黒マイナーズ監督から、「Youtuberにならないか?」と誘いを受けた。監督は映像系の編集マンとして経験と実績を持っていた。野球を中心にしたYoutubeチャンネルを開設し、二人三脚でやっていくことを提案され、向さんの心は決まった。2015年10月「野球Youtuber向」が誕生した瞬間だった。
監督との別れと新たな壁
チャンネル開設後1年で7000人前後の登録者数を獲得。今となっては少ない数字かもしれないが、当時はまだYoutuberが世に出始めた段階。難しさを実感すると共にクーニンズやトクさん等、今では野球Youtuber二大巨頭といわれるチャンネルとの競合もあった。そんな中、監督から「ここからはお前ひとりでやっていけ」と解散宣言を出されてしまうのである。監督の意図はこれ以上チャンネル登録者数が伸びないという推測の元、ここで向さんと離れるという決断だった。突如一人での活動を余儀なくされた向さん。動画の編集に関する知識はゼロ、見よう見まねで自分で動画を作った。撮影と出演、そして動画編集と全て自分で取り組むようになった向さん。当初は野球あるある系コンテンツで数字を伸ばしていたが、時間に追われ次第に動画を上げるペースが落ちていった。
野球を楽しむことに壁はない
2017年2月、動画を上げることもままならない状況ではあったが、自分のチームを持って野球がしたいと向さんは思い始める。SNSでチームを作ることを告知、すると小学生から50歳の大人まで幅広い層がグラウンドに集まった。これが今でも続くムコウズの初期メンバーだ。とにかく野球を楽しく、そして楽しさを伝えることをがモットーの向さん。どんな人でも向さんと会ったことがある方は入部可能というルールのもと、チームを結成した。そうして知り合ったメンバーとの食事や飲み会を通じて、色々な思いやバックグラウンドを持ちながらプレーしていると知る。子供を持つシングルマザーやいじめを受けた中学生、がんになった話等、皆それぞれつらいことや悲しいことを過去に経験していた。メンバーの想いを聞いて、今まで向さんのやってきた野球が幸せだったことを改めて知ることになる。そこで、スポーツの楽しさを伝え、問題を抱える子供や大人を少しでも助けたいとNPO法人を立ち上げ、現在も全国に活動を広げている。
野球Youtuber向さんのこれから
野球の楽しさをもっと色々な人に伝えることは以前からと変わらない。これからはムコウズを全国に広げていきたいそうだ。47都道府県にムコウズを作り、ムコウズカップを開催することが向さんの夢になっている。今まで出会ってきたムコウズ部員は500人以上。過去最大級の草野球チームとして今後も野球を通じて多くの人々を幸せにしていくつもりだ。古くからの慣習が残るとされている野球だが、野球の壁を取り除いてくれるのはもしかしたら向さんなのかもしれない。
(teams編集部)