硬式野球出身者なら必ず直面する!?「草野球肩」
2020/2/21
週末に草野球を楽しむことが多いみなさん。そんな楽しい草野球ですが、怪我に悩まされたり、思い通りにプレーできなかったりという悩みも少なくないはず。いろいろ調べてみるものの草野球に特化した治療法やトレーニングなんて載ってないよ。。という声を受け、teamsではそんな「草野球選手」のための草野球をやる前提でのコンディショニングや身体の使い方について野球選手に精通しているトレーナーや専門家の方にお話ししていただきます。
第一弾は「草野球肩」 野球医学に精通する馬見塚氏に草野球独特の症状について話していただきました。
みなさんこんにちは!本日は『草野球肩』についてご紹介します。
草野球肩という言葉は聞かれたことがないかも知れません。なぜなら、当クリニックで使われている通称ですから。
草野球肩とは、以前競技レベルの野球部に所属して毎日のように練習していた選手が、週に1回から月に1回程度しか野球をしなくなって肩を傷める場合を指しています。
そのメカニズムは、草野球では練習の頻度も減り、ウォーミングアップやトレーニングもあまりやらなくなってパフォーマンスを出すための前提条件のレベルが下がったにもかかわらず、競技レベルの野球部に所属して毎日練習をしていた時のパフォーマンスイメージを脳が記憶していて、ついつい全力でやってしまうためにおこるのです。特に草野球選手は背骨の柔らかさ、肩甲胸郭関節の柔らかさなどが競技野球時代より低下するため、そのしわ寄せが肩関節の過剰な動きを必要とし、上腕骨と肩甲骨が衝突することで肩の痛みが出てくるのです。
その治療は大まかに分けると3つあります。
ひとつ目は、パフォーマンスの出力を下げること。簡単に言えば、レベルを下げて野球をすることです。草野球肩の選手は軽く投げているといいんだけど強く投げたり全力で投げたりすると痛くなるといいます。ですから、軽く投げるのも一方です。しかし、パフォーマンスレベルが大きく下がってしまうは受け入れられない選手もたくさんいます。
ふたつ目は、競技野球時代に戻って十分なウォーミングアップを行い、毎日とはいかなくてもなるべく練習を行う方法です。年齢が高くとも毎日練習しているプロ野球や社会人野球選手は長くパフォーマンスを出すことができていますね。しかし、一般的に社会人の方々に毎日のように野球をする時間はありません。
そこで、3つ目ですが、当クリニックでは、「逆フェーズ法」という投球動作指導方法をお伝えし、あまり練習をしなくても肩を痛めないように選手を導いています。キーとなる動作は、「ステイバック」と「外旋コックアップ」です。
ステイバックとは、桑田真澄さんがいう「セカンド方向にたらいの水をこぼしてから投げる」という動作によく似ています。あのように、体幹をセカンド方向に傾斜させながら上胴と下胴の間を少し折り曲げてコックアップをするのが良いかと思います。こうすれば、上肢の力感に頼らなくても、速いボールを投げれるようになります。外旋コックアップは、しばしばハイレベルアスリートで見られる「肘から先にコックアップ」するのではなく、「手を先行させてコックアップ」する方法です。こうすると、肩を痛めにくい動作になるのです。これは動作させ習得していればパフォーマンスも出やすく痛みは出にくいという「草野球」にもってこいの投法なのです。
週末のグラウンドに立つとついはしゃいでしまう気持ちもわかりますが、何年も大好きな野球を楽しむために自分の身体の使い方と予防はしっかりと取り組んで草野球を楽しみましょう!
馬見塚尚孝(まみづかなおたか)
ベースボール&スポーツクリニック 野球医学センターベースボール&スポーツクリニック 野球医学センター長)
1993年 琉球大学卒業→ 1993年 筑波大学整形外科レジデント→ 2007年 筑波大学大学院修了 博士(医学)→ 2011年 筑波大学附属病院水戸地域医療センター講師→2019年 現職
野球関係では2006年から筑波大学硬式野球部チームドクターや部長を歴任。大分舞鶴高校や筑波大学附属駒場高校兼大分市立大在中学校臨時コーチを経験し2020年から東京大学硬式野球部トレーニング担当を務める。
現在 Baseball clinic誌『野球医学』の教科書の毎月連載やNHK BS-1 ワースポ×MLBレギュラー出演中。