イチロー氏も踏み入れた新たな世界
野球人として感じる草野球の魅力

2020/2/21

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ひと昔前はおじさんの娯楽として愛された草野球。時が経ち、今では現役を引退したイチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)も愛する人気スポーツになっている。

野球経験者、未経験者をも没頭させる魅力とは一体、何なのか。昨年12月1日に兵庫・ほっと神戸で行われたイチロー氏のプレーを見て改めて思い直した。

日米通算4367安打をマークした“レジェンド”は素人相手にガチンコで挑んだ。相手は智弁和歌山高校の教職員チーム「和歌山智弁」。イチロー氏は「9番・投手」でスタメン出場し9回16奪三振の完封、打っても4打数3安打1打点の大活躇だった。

当然のごとくイチロー氏の一人舞台……。だが、球場に訪れたファン、相手チーム、仲間、そして報道陣たち全員が笑顔になる一戦だった。相手チームの「和歌山智弁」の打者はイチロー氏の投げるボールに必死に食らいつき、打者・イチロー相手に投げる投手はこちらにも緊張感が伝わるほどストライクを取るのに必死だった。

イチロー氏と野球ができたのは一生の思い出となるはずだ。今回の夢のような1日は草野球だからこそ実現できたといってもいい。

正式な大会やリーグ戦では基本的なルールは野球と変わらないが、河川敷などで行う練習試合などは打者が10人並ぶこともあるなど選手変更などは自由。打って、投げて、走る…。子供の頃に野球を始めた純粋な感覚で全員が白球を追っていく。勝利至上主義のイメージが強い野球だが、草野球だけは違うと感じている。もちろん、全国大会なども開催され“ガチ勢” もいるが、勝ち負けを抜きにして純粋に野球を楽しむことができるのが、草野球ではないだろうか。

上手、下手、関係なく野球人なら“諦める”ときが必ずくる。中学、高校、大学、そして社会人…。時期は違うがいつしか勝敗を求める真剣さと戦ってきた自分に別れを告げる。だが、しばらくすると野球熱は再発する――。そんな経験をした人も多いのではないだろうか。筆者も大学まで野球を続けてきたが就職を機にしばらく野球から離れた。だが、昔の球友たちが休日を利用して純粋に野球を楽しむ姿に惹かれるようになった。地元のチームに加入し、対戦相手は60歳を超えたベテランの時もあれば、現役バリバリの大学生の時もある。

試合に勝って得られるものは甲子園出場やプロスカウトヘのアピールではない。だが、今までになかった充実感がある。就職、結婚、新たな家族の誕生など環境が変わり出会いはなくなるものだ。見ず知らずのチームと対戦し、時には名の知れた選手とも出会い同じ趣味をもった共通の仲間が増えていく楽しみもある。

そして草野球が終わっても楽しみは続く。試合後はチームのみんなで食事、一杯やる人もいるだろう。昔話に花を咲かせ、素人なりに技術面、試合の反省を行い次のゲームに備える。グラブ、ハット、スパイクなどを新調するのも楽しみの一つだ。

最近ではインターネットで対戦相手、球場の手配も可能で9人揃えばいつでも試合が組める環境になっている。今では野球YouTuberも多く存在し草野球人口、新規参入するチームが増加している。草野球の魅力を挙げればキリがないが、忘れかけていたものを思い出させてくれ男女関係なく全世代の人が楽しめるスポーツではないだろうか。

(Full-Count編集部・橋本健吾)

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