全てはチームのために、二足の草鞋を履く草野球監督

2020/3/13

プロ野球から少年野球まで国内の人気スポーツとして栄えてきた野球。今では重度の障害のある人も楽しくプレーすることができる「ユニバーサル野球」や5人制でゴムボールを使ってプレーすることができる簡易野球「BASEBALL5」など野球人気は落ちるどころか横に広がり始めている。そんな中、町の野球場では毎週末野球をプレーする大人たちを見ることができる。たかが草野球、されど草野球。teamsでは草野球に情熱を捧げる大人たちに注目し、野球への思い、チーム結成の裏側などを取り上げていく。 第三回は創設46年目を迎える伝統ある草野球チーム「新田クラブ」に迫ります。

平日深夜の工事現場、そこで黙々と働く一人の男性がいる。今回の主人公である新田クラブ選手兼監督の中本築さんだ。

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新田クラブはチーム創設46年目。1974年に大阪府大東市にあった「ふじや食堂」の常連客を中心に創設されたチーム。当時メンバーだったのは中本築さんの父・隆治さん。築さんはまだ幼いころから隆治さんに連れられて野球と触れる毎日だった。新田クラブをきっかけに築さんも野球をはじめ高校まで野球を続けた。卒業後、築さんも新田クラブに入部。父隆治さんが監督のもと、チームの中心選手として活躍し、第27回サンスポ野球大会では優勝し西日本代表にまで上り詰めた。選手としてもMVPを獲得する活躍ぶりを見せている。

その後、父からチームを引き継ぎ、選手兼監督としてチームを牽引。しかし、当時の主力メンバー5人がチームを離れることになり、チームの存続すら怪しい危機が監督就任後すぐに訪れた。40年以上続いているチームをここで解散するわけにはいかないと、とにかく部員集めに奔走。何とか9人野球ができる人数を集めたが、4人は野球未経験者。相撲部にバトミントン部、運動部未経験者と果たして試合になるのかというメンバーだった。ただ一つ救いだったのは履正社高校出身で、同校甲子園初出場時のエースだった小川さんの加入だった。そこから中本さん、小川さんのチーム強化の日々が始まる。

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週末も平日も夜に全員で集まり練習を実施。初心者メンバーには基本から徹底的に指導した。ただ、夜の練習はナイターを使用し、球場確保費用が高く、続けていくことが難しいと感じていた中本さんは、平日の仕事の後にチーム牽引のために工事現場でのバイトを決意。平日は9時~18時まで仕事をし、20時~27時まで工事現場で働く仕事を約5年間継続した。チームメンバーには内緒でこの生活を続けた中本さんに、なぜそこまでできるのかを伺うと「とにかくチームを勝たせたかったから」という答えが返ってきた。自身も草野球大会で優勝を経験し、仲間と喜びを分かち合うことの素晴らしさを体感していたことと、初心者でも一緒に戦ってくれる仲間に対する責任感が原動力になったという。自分のためではなく、メンバーのことを考えての行動だった。その努力は報われ、チームはみるみるうちに成長。2017年のストロングリーグでは関東の強豪バンバータに勝利し、見事全国優勝を勝ち取った。ちなみにこの深夜バイトは5年になった頃、メンバーにばれてしまう。チームメンバーもこの事実に衝撃を受け、より一体感が生まれたとのことだ。

今では部員が20名を超え、人数に困ることはなくなった。必死に作り上げたチームのまとまりは強く、試合中チームとしてのサインはなく選手個々が考えて、盗塁やエンドランを意思疎通で実行できるようになったという。新入部員からは「いい加減サインを教えてください。まだメンバーとして認められないんですか?」といわれることもあるが、本当にチームのサインはないのだ。

今後の目標について築さんに伺うと「毎年全国大会に出場し、優勝し続けたい。」と返答があった。チームに新人が入部する度に「この選手にも優勝する喜びを味あわせないと。」という使命感にも似た気持ちが出てくる。自分の時間を犠牲にしてでも、チームのためを思い人生を草野球に捧げる築さん。これからも新田クラブの歴史は何年先も続いていくだろう。

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(teams編集部)

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